Character Design Talk - Takashi Takeuchi x Seijin Takenoko and Fate/extra Series Mangaka Talk - Robi~na x Seijin Takenoko are two 2014 interviews on KadokawaWP's website commemorating the release of the second volume of Fate/EXTRA CCC FoxTail.
Part 1
Character Design Talk - Takashi Takeuchi x Seijin Takenoko
Intro
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フェイト/エクストラ CCC FoxTail2巻の発売を記念して、今回より不定期で本作の 著者である、たけのこ星人と「フェイト/エクストラ」のキーパーソンとの対談企画を 掲載してゆく。対談を通して1ゲーム作品のスピンオフ作品でありながら独自の展開の 見せる「FoxTail」の魅力を探ってゆきたい。
TYPE-MOON代表。イラストレーター。 「フェイト/エクストラ」ではサーヴァント のキャラクター原案を担当。(キャラデザ インはワダアルコ)今回の企画では新サー ヴァント・セイバーのデザインを手掛けた。
漫画家。 本作「フェイト/エクストラCCC FoxTail 」を手掛ける。デビューより成年向け雑誌を中 心に活躍。また間桐桜好きでも有名。代表作 「シアワセ少女」「カクセイ少女」他。
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Questions
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――今日は、「フェイト/エクストラCCC FoxTail」2巻の発売を記念して、 著者であるたけのこ星人さんとTYPE-MOONの武内さんに、この作品についてお話を伺いたいと思います。 今日はよろしくお願いします。
たけのこ・武内
よろしくお願いします。
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――「Fate/stay night」の発売から10年が経ちまして、その間にゲーム、 コミック、小説などなど関連作品が数多く発表されています。そうした中で、この作品はどういった位置付け になるのでしょうか。
たけのこ
シリーズ中の位置付けとしては漫画内ではボカしてますがぶっちゃけてしまうと、 ゲームの「フェイト/エクストラCCC」がひとつのルートだとして、マンガの方は それとは違うルート… 「FoxTail」ルートという感じですね。本編とは異なる、もうひとつのありえた「フェイト/エクストラCCC」 です。2話文の説明回をやって、最低限の設定解説はしましたので、この作品から入っても大丈夫……とは思います。
武内
まあ、調べながら読んでいただくというのも別にありだとは思うんですよ。シリーズの別作品を知っていた方が 面白くなる部分というのは、どうしたって出てきますから。
たけのこ
「フェイト/エクストラ」や「CCC」をプレイしている人たちには差異を楽しんでもらって、そうでない人たちには キャラやマンガのノリを楽しんでもらって、盛り上がってもらえればと思ってます。まあ、「フェイト/エクストラ」には ろび~さん(注1)のコミカライズもありますので、ゲームをやる時間がないという方はそちらをぜひ。(笑)
注1 ろび~なさん
「フェイト/エクストラ」をコンプティークで連載していた。先日そちらの連載も終了し、新たに「フェイト/エクストラCCC」 本編の連載開始が発表された。なお「フェイト/エクストラ」最終6巻は12月10日発売。
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――この企画が立ち上がった経緯について教えてください。
たけのこ
実は、単行本1、2巻のあとがきマンガである程度書いてしまっているのですが。(笑)「Fate/Prototype」のアンソロジーに参加させていただいたのが最初で……それをきっかけに、「コンプエース」さんで「Fate」シリーズの仕事をさせていただくようになりました。
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――「Fate/Prototype Tribute Phantasm」収録の「恋する乙女」ですね。
たけのこ
僕は長いこと成人マンガを描いてきたんですけれど、アクションをずっとやりたかったんですね。ギャグの話なんかは思った以上にアンケートはとれていたらしいですけど、当時の編集さんからはそのあたりは作家の方向性として出来れば抑え気味にしようと言われてました。だから、今回の依頼が来た時はウキウキしながらやらせていただいて。(笑)この漫画は発売中の2巻に再録してますので、買った人は是非読んでみてください。
武内
自分がたけのこさんの作品を読んだのはあれが最初で、アクションの描ける人なんだなあというのが第一印象でした。この人すごくいいよね、是非とも何か描いて欲しいという話を編集部としていて……。
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――武内さんの肝いり企画でもあったんですね。
武内
そういう部分もありました。最初は、別の作品のコミカライズの話をいただいたのですけれど、そちらは既に別の方と話を進めていました。じゃあ、どんなものをお願いしようかと考えて……キャス狐を主役にして、なおかつ既にある作品のコミカライズではなく、コミカライズから一歩踏み込んだ新しいことをやりたいという話をさせていただいたんです。これは、「フェイト/エクストラ」関係の企画につきまとってきた問題で、赤セイバーを中心に描くと、キャス狐を出せなくなってしまうんですね。エイプリルフールなんかのギャグ企画なら共演させられるんですけど、ちゃんとやろうとするとどうしても成り立たない。
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――キャス狐をちゃんと主役にした物語というのを作りたいと思っていた時に、たけのこ星人さんが 現れたんですね。
武内
たけのこさんに何かしらの作品を描いてもらうという前提がまずあって、その作品において何を独自性、武器としていくのかを考えていきますと、キャス狐を中心に置くというのが良いだろうと。
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――それは、たけのこさんの絵柄から?
武内
そうですね。キャス狐はやっぱりおっぱいが好きな、おっぱい星人に描いていただくべきキャラクターなので。
たけのこ
お話をいただいた時はまだ「CCC」発売前で、「フェイト/エクストラ」のキャス狐外伝という感じでしたね。
武内
企画が動き出したのは、「CCC」発売の半年くらい前でしたか。当初はそれほど大きい規模の作品とは考えていなくて、単行本1巻程度、長くても2巻程度におさまるもので考えていました。その後、奈須がキングプロテアなんかのサクラファイブ(注2)の設定を持ちこんできたタイミングで、時系列的にも「CCC」あたりの話になるので、もういっそ「CCC」の別ルートに、という話になりました。
注2 サクラファイブ
「フェイト/エクストラ CCC」初期プロットに存在していた五体からなるキャラクターユニット。パッションリップ、メルトリリスのみがゲーム本編に登場した。設定資料集「フェイト/エクストラ material」にイラストと設定が掲載されていたが……。
たけのこ
奈須さんが、その場でホワイトボード上にざっくりしたストーリー構成までやってくれまして、すごく助かりました。(笑)
武内
アニメのシリーズ構成って大事ですよね、本当。
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――「FoxTail」というタイトルは、どのような経緯で決まったのでしょうか?
たけのこ
メールでやり取りをしている時に、奈須さんがテキストの中に「たけのこ星人版CCC(以下Foxと呼称)」で「CCC Fox」と書いてきたので、これでいいんじゃないかと思ったんですね。ただ、それだけでは寂しいので、もうちょっと長い言葉にしようと。「Fate」シリーズもそうですけれど、「空の境界」にもひっそりと英文タイトルがついてるじゃないですか。なので、「フォックスなになに」という英文を作ってみたんですけれど、TYPE-MOONさんから「長い」という指摘が……。
武内
ちょっとひねり過ぎでしたね、ぱっと見で、もっと強く伝わる言葉がいい。でも、フォックスだけでは弱い……いくつかの案を出すうちに、尻尾と物語(注3)をかけて、「フォックステイル」がいいだろうということになりました。
注3 尻尾と物語
英語の尻尾(Tail)と物語(Tale)は同音異義語なので、よく言葉遊びに使用される。有名どころでは、ルイス・キャロル「不思議の国のアリス」第3章における、ネズミが語る「長い物語(long tale)」が「長い尻尾(long tail)」の形状にレイアウトされたタイポグラフィーが知られている。
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――面白い話ですので、いずれあとがきマンガで是非に。(笑)さて「フェイト/エクストラCCC FoxTail」 の大きな特徴のひとつとして、オリジナルのサーヴァントであるセイバーの存在がありますね。
たけのこ
最初の打ち合わせの時に、武内さんから新サーヴァントを出すくらいのサプライズがあった方がちょうどいいという提案をいただきまして。僕も賛成したんですけれど、まさかそれを自分で考えることになるとは思いませんでした。(笑)
武内
たけのこ星人さんが何をやりたいかというのを全部出していただいて、その上でこちらからどうしたい、という話を提案させていただこうというのが、奈須の方針だったんです。
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――TYPE-MOON側から、サーヴァントチョイスについて何かしらのリクエストはあったのでしょうか。
武内
キャス狐を中心にするという話から始まったので、今回は「倭のエクストラ」をやろうというコンセプトがありました。キャス狐をきちんと描くために、その対になるキャラクターが欲しい。キャス狐は日本の英霊なので、もうひとりも日本の英霊にするというのが妥当だと考えました。そういう理由から、日本の英霊でキャス狐に合う人を、とお願いしました。
たけのこ
ただ、僕にはその方面についての知識が全くなかったんですね。ならば人に聞こう! ということで、何人かの知り合いに「日本で、女性で、良さそうな英雄いる?」と聞いたんです。色々と候補を挙げてもらって、自分でも調べてみたんですね。そうした中に、実に「Fate」向けの英雄が見つかりまして、設定を練ってみました。このあたりのより詳しい経緯を、2巻の巻末オマケ漫画で描いてます。(笑)
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――ここに、たけのこさんが最初に描かれたラフ画がありますが、この段階ではいかにも日本の英霊っぽい デザインですね。
たけのこ
人選を済ませて、描き起こしてみたんですけれど、どうもしっくりこなかったんですね。自分の好みではあるのだけど、このキャラクターがキャス狐や凛といった、他のキャラクターたちと並んでいるところを想像すると……全然、馴染んでいないなあと。とりあえず、マンガで動かしてみて、出たとこ勝負でいくしかないと考えながら提出してみましたら、武内さんから「ネタがあるんでデザイン考えてみていい?」というお話がありましたんで、もう願ったりかなったりでした。
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――武内さんが、スピンアウトのコミック企画向けに、自らサーヴァントのデザインを描き起こされる のは珍しいですね。
武内
「フェイト/エクストラ」ではやっていますので、その流れに沿った作り方を「FoxTail」でも踏襲しているとは言えますね。これは奈須の言葉なんですけれど、新いことを始める時に、何もかもが新しいと旧来のファンが入り込みにくいというのがあるんですね。だから、多少、原作サイドの方で監修をして、「Fate」らしさというのを入れ込んでいった方がいいと。
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――それが、このJKセイバーに。(笑)
武内
実は、最初にお話しをしていた時からもう、「キャス狐の対にするなら、女子高生みたいなキャラクターがいいんじゃないか」って考えてまして。
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――耳と尻尾があるのも、対になるということを意識してのデザインだったということですか。
武内
そうなりますね。
たけのこ
僕もこのデザインを拝見した時、すごくいいんだけど、この耳にはどういう意図があるのか、武内さんに確認しました。意図があるのだったら反映しますし、意図がなかったらこちらで考えてみますと話した覚えがあります。
武内
「鉄腕アトム」でいうところの、アトムとアトラス(注4)ですね。すごく似ているんだけど、全く正反対だというのが対として成立するだろうという予感がありました。髪の毛は同じなのだけれど、服の色が違う。「Fate/stay night」で言うと、それこそアーチャーとランサーみたいな、どこか似ていて、だけど大きく、はっきりと対立する要素が入っているというのが、対になるキャラクターの記号としてはまとまるんですね。それで、たけのこ星人さんのデザインをある程度引き継ぎつつ、こういう形に落とし込ませていただきました。
注4 アトムとアトラス
アトラスは「鉄腕アトム」に登場するロボット。アトムのライバルともいうべき存在で、1980年制作のTVアニメ第2作では 同じ設計図から作られた兄弟ロボットという設定になっていた。
たけのこ
そういえば、最初はもうちょっと優しげな、アルクェイドっぽいデザインでしたよね。
武内
もっと顔をきつくして欲しいという、奈須からのリクエストがあったんですよ。
たけのこ
でも本当、助かったんですよ。最初に考えていたストーリーは全然別物だったんですけど今ひとつ馴染めなくて、もうひとつネタがあると嬉しいと思ってました。もともと、テンション高いはっちゃけキャラを描くのが好きなんですけど、「CCC」にはもう赤ランサーがいるじゃないですか。そしたらJKという単語が出てきたので「JKを免罪符にテンションが高いキャラに出来るな」と!
武内
「Fate」のサーヴァントの特徴として、英雄をベースにしつつ、どれだけそのあと面白いものと組み合わせられるか……というのがあります。僕らがずっと好きだった要素をどういう風に乗っけるか。たとえばアーチャーやランサーには少年マンガ的な要素を乗っけてああいう形になっています。普通のやり方ですと、たけのこさんが最初に描かれたデザインになるんですけれど、さらにひとつ飛ばして「Fate」っぽくすると……JKなんですよ。(笑)
たけのこ
もう、鞄まで持っていて最高ですよね。時々描き忘れちゃっていて、単行本で描き足してます。(笑) さっきお話の出た耳の整合性についても、JKといえばファッション大好き、そして気にいったファッションを見かけたので真似てみた、という流れなら自然かなという設定でまとめてしました。
武内
キャスターのための物語でありつつ、JKセイバーの存在はキャスター物語を成立させるためのいちばん重要なところと思っています。まあ、その後に奈須があれこれつっこんできて、他の部分も目立ってきましたけど。(笑)
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――オリジナルキャラクター以外にも当然ながら「フェイト/エクストラ」のキャラクターが 何人も登場しています。たけのこ星人さんが何かしら気をつけられていることはありますか?
たけのこ
青年向けの絵柄と期待されている、とのことですので、普段の絵よりも頭身を少し高め、目を小さめを一応意識しています。単行本1巻収録の「フェイト/エクストラ CCC TRIAL」はまだそういうことを気にしていなかったので、恐らく自分の本来の絵柄に近いですね。僕は、自分の絵柄には個性があまりないと感じているんですけれど、それでもやっぱり僕が描いている以上、僕の絵柄にはなってしまうんですね。あまりそうなりすぎないように、いつもワダアルコさんの絵を並べて描いています。
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――時々、原作ゲームを意識した構図の絵もありますよね。
たけのこ
1巻収録のチャプター2の扉では、赤セイバーがえびぞってる絵に対応する構図でキャス狐を描いてみたり、「コンプエース」の方では「CCC」の通常パッケージのキャス狐版みたいなのを描いてみたり。ゲームのアナザールートですので、僕としてはできるだけオフィシャル感を大事にしたい、少しでもワダアルコさんの空気が入るといいなと。見ている人がどう思うかは別に、あくまでも僕としてはそうした要素を絵に落とし込めればと思っています。
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――凝り性でいらっしゃる。(笑)
たけのこ
あと、集合絵を描く感じとかTYPE-MOON作品っぽい感じでとか。元々自分でも好きなんですけれど。実は僕、武内さんの絵を見てシンパシーをずっと勝手に感じてたんですよ。じつは僕が、ちゃんと目鼻耳の揃った人間を描き始めたのは、冨樫義博さんの「幽☆遊☆白書」の模写からなんです。で、「Fate/stay night」を初めてやった時に、武内さんは絶対にマンガ畑の人で、冨樫さんの影響を受けてるって思ってました。後になって、「幽☆遊☆白書」が好きだという話を何かで読んで「ほらやっぱり!」って。
武内
「幽☆遊☆白書」、模写しましたねえ。
たけのこ
武内さんとそのお話をした時に、好きなキャラ聞かれて、返せなかったことが僕の中でずっと心のしこりとして残ってますよ。(笑) 作品全体が好きなんだけど、特定のキャラになると……まあ、玄海とか好きですけど。とにかく、勝手に起源が似てるって思ってまして、アクションシーンを描いている時とか、「武内さんはこれで満足してくれるのかなあ」とドキドキしながら描いてます。
武内
なるほどねえ。「Fate/Prototype」のアンソロを読んだ時に、この人のマンガ力は高いな、俺はこういうマンガ好きだなあと、印象に残ったんですよ。それはつまり、自分の好みだったということなんですね。(笑)
たけのこ
ジャンプ世代なので、あの雑誌のマンガのフォーマットが僕の底のほうにしみついているのは間違いないと思います。
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――そんな武内さんの、お気に入りのシーンを教えてください。
武内
1巻Chapter1のキングプロテアの表現はかなりぞっとしましたね。「CCC」本編に未登場なので、見たことないじゃないですか。「やっぱこうだよ、こうこなくちゃねー」っと、久しぶりに興奮しました。後はまあ、2巻に入っているキャス狐の朝チュンシーンですか。(笑) こういう、フェチっぽいというか強烈な印象のコマとうのが時々あって、たけのこさんの描くそういうシーンが好きだったりします。
たけのこ
それなんですけれど……先ほどおっぱい星人だというお話をいただいたんですけれど、実は最近、おっぱいに対する愛情がなくなってきまして……。
武内
え? それはどういう?
たけのこ
成人マンガから離れれば離れるほど、自分の中から成人マンガ的な要素が減ってきたというか……キャス狐を描いても、おっぱいにあまり愛情を注がないようになっていることに最近気付いたんですよ。Chanpter1で、桜が倒れているシーンがあるじゃないですか。
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――パンツ丸出しのすんごいシーンですね。
たけのこ
これ、編集さんから「桜のエロいシーンをいれましょう!」というリクエストがありまして、自分なりにエロく描くぞーと思ってやったんですね。ちょっと抑え過ぎたかな、でもこんなもんかなーと思ってたら、奈須さんの方から「桜の生パン……!まさかの不意打ちでビックリ」という思っていたより大きな反応が返ってきて……自分の感覚と真逆だったので、すごくびっくりしたんですね。成人マンガとそうでないマンガのラインの違いを把握していなかったんだなと。それで、意識的にエロい要素を抑えはじめたんですけど……。
武内
そこはちょっと誤解があるかな。エロいのがいけないんじゃなくて、露骨すぎるとギャグに見えちゃうんですよ。
たけのこ
成人マンガ家って、一般向けマンガをやるときにエロい要素を期待されることが多いと思うんですけれど、正味のところ自分はエロを描くのって得意ではないんです。もう少し正確に言うとエロいマンガに面白いことを付け足すというのは楽しくやれるんですけど、面白いマンガにエロい要素を付け足すのって自分はなかなか上手く出来なくて。で、そういうところが減っていった結果、自分の中からおっぱいへの愛情が消えてしまって……キャス狐のおっぱいを期待した読者の方が、「思ったよりおっぱいしていないなー」と思われたとしたら、すごく申し訳ないことをしたと、すごく反省したんです。それで、もうちょっとおっぱい出そうかなーと思ってキャス狐の朝チュンを描いていたら、まさにそのタイミングで武内さんから「もうちょっとエロくしたほうが、いいんじゃない?」というお言葉をいただいて「この人に見透かされてる! 流石だ!」って思いました。(笑)
武内
あのシーンを見る前、打ち合わせで「本来の武器を使っていないんじゃないか」と指摘したんですよね。大暮維人さんとか、ものすごいアクションとおっぱいが共存しているマンガ家さんっているじゃないですか。たけのこ星人さんはそこを目指した方がいいんじゃないかと。
たけのこ
うまいですよね、大暮維人さん。あと、「プリズマ☆イリヤ」のひろやまひろしさんも。
武内
「プリズマ☆イリヤ」がどうして受けているかといったら、アクションとギャグとエロじゃないですか。(笑)
たけのこ
自分では器用なほうの作家だと思っていたんですけど、実はそうでないことに最近気付いてしまって。キャス狐の服装っておっぱいが結構見えてて、すごくキャッチーなんですけれど、そのキャッチーさを自分が活かしきれていないことに最近気付いて……もうちょっとちゃんとやらないといけないなと。
武内
あーでも、それ伝わるわ。ものすごく印象に残ったんですよね、あの朝チュンシーン。可愛いなあって。何でこんなに可愛いのかなあ……たしかに髪型も違うというのもあるんですけど、やっぱり愛がこもってたからですよ。(しみじみと)でも、あれですよね。おっぱいって……深いですよねえ。
たけのこ
いきなり何を言いだされたんですか。(笑)
武内
こう、黄金の比率みたいなのがあるじゃないですか。
たけのこ
武内さんは割と、二次元のキャラクターとしては小さめの、現実感溢れるサイズのおっぱいを描かれますよね。
武内
なるほど……。(考え込む)
たけのこ
あれ? あまり自覚されてはいない?
武内
そうですね……あまりおっきいおっぱいを描くのが得意じゃないといいますか。バランスがよくて、すごくおっきくて綺麗なおっぱいを描くのは難しい。
たけのこ
むやみに大きくなったり、胴が長くなっちゃったりしますよね。
武内
それは、そういうものがものすごく、本当に好きな人が目指せるバランスだと思うんですよ。自分は割と、バランスの整ったものが好きなんです。自分の絵の中でいちばんいいくらいのバランスの大きさというと、五次ライダーくらいが限界で、それ以上の巨乳というと……パッションリップは、自分には描けないです。
たけのこ
武内さんのパッションリップ、見てみたいですけどね。(笑)
武内
いやあ、難しいですよ。ただの肉の塊としては描けると思うんですけど、自分自身が美しいと思えるおっぱいとして描けるかというと……。
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――漫画内でのパッションリップはどうでしたか?
武内
生々しさがずいぶん増えましたよね。(笑)
たけのこ
そこは露骨に自分の成人マンガ家としての部分が出ていますね。これだけおっぱいが大きいと、無視できないんですよ。力を入れて描かなければいけないと……ウキウキしながら描きました。当然、おっぱい好きな人に言わせるとまだまだだと言われてしまうと思いますが。本当、いろんな人やキャラクターの顔と同じようなもので、何を美しいと思うのかがすごく出るのと、形としてもそうなんですけれど、胸の表現ってアプローチの方法がすごくいっぱいあるんですね。
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――武内さん的に、おっぱいが絶品だと思っておられるマンガ家さんはどなたになりますか?
武内
すごく尊敬している人がいるんですけれど……内緒です。
たけのこ
ええっ、知りたいなあ!
武内
そんな、何でもかんでも話すわけねえだろ。(笑)自分だけの大切なものってのは、誰にでもあるんですよ。
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――たけのこさんはいかがでしょう?
たけのこ
おっぱいかー。友達の成人作家さんたちにはおっぱい好きが大勢いて、そこの情熱には絶対たどりつけないなっていうのがあるんですよね。基本的には、僕よりもうまい人たちはみんな好きで、好き以上に参考にしちゃう。「たけのこさん、もっとぷにぷにした肉とか描いたほうがいいんじゃないですか」とか知り合いの作家さんに言われて、「たしかになー」とは思ってはいます。まだまだ出来ていませんが。
武内
たけのこさんはすごく真面目な作家さんなので、考え過ぎているんですよ。脳を使いすぎて性欲が減っちゃっているのかも。
たけのこ
頭でこねくりまわして考えてしまうタチで、それは長所でもあるけれど短所でもあるとは思います。今もキャス狐を動かすにあたって、もっともっと動かせるはずというのが僕の中にあるんです。なので、いちいち考えてしまうんです。ギャグが足りないかなと思ってギャグを付け足して、シリアスになった方がいいと思ってシリアスを付け足す。そんな風に頭で考えて動かしているところがあるんですけれど、キャス狐はもっともっとポテンシャルがあるキャラクターだと思うんです。そこをもうちょっときちんと出せたらいいなーと思いますね。
武内
キャラクターを深く愛して描くタイプの作家と、物語の重力を大事にして書く作家がいるんですよ。例えて言うと奈須きのこが前者で、虚淵さんが後者。虚淵さんは冷徹な世界を描けるし、奈須きのこの作品には感動できる。まあ、こういうお話も聞けましたので、たけのこさんにはもっとこう、アクションをしっかりと描きつつ、自分の中のリビドーみたいなものを見せてくれるといいなあと思ってます。
たけのこ
「フェイト/エクストラ」のコミカライズされていた、ろび〜なさんは、赤セイバーをいかにかわいく描くかというところに注力されていて、そこが素晴らしいなと思っています。僕もパッションリップのおっぱいはウキウキと描けましたので、頑張ってみます。
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――まさかのおっぱい談義からいいお話っぽくなってきましたところで(一同笑)、最後に武内さんから この作品についての感想と期待を語っていただければと思います。
武内
たけのこさんも仰っていたように、オフィシャル感をとても大切にしてくれているというのを確かに感じるのだけど、自分としては大切にしすぎじゃないかなとも思えるところがありますね。
たけのこ
「Fate」の新しい作品をやる時は、必ずその作家さんなりの新しいことをやって欲しいということを武内さんがよく仰っていますが、確かに自分はその真逆にいってるかも、とは思いました。
武内
真逆ということはないと思いますよ。真面目に話を作り過ぎて、ちょっと助走が長いかなというところは感じていますけれど。(笑)
たけのこ
そこは、自分でも思ってます。(汗)
武内
自分としては、やっぱりたけのこ星人のマンガであるし、この人でないと描けないマンガになるといいなあと期待しています。ようやく動きだした物語で、「フェイト/エクストラCCC Foxtail」でしかできない、新しい物語と新しい結末を楽しみにしています。
聞き手・構成:森瀬 繚(ライター/作家)
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Part 2
Intro
Fate/Extra Series Mangaka Talk - Robi~na x Seijin Takenoko
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特別企画2回目となる今回のゲストは、コンプティーク誌上でコミック版「フェイト/エクストラ」の著者であるろび〜な。「フェイト/エクストラ」という共通の世界観を持つゲームを元に作品を生み出している作家たちは、どのようなスタンスで漫画執筆に臨んでいるのか。それぞれの作家性の違いを探ってみた。
漫画家。コンプティーク誌上で2011年4月から「フェイト/エクストラ」の執筆を始め、2014年11月まで連載。3年半という長期連載を無事完結に導いた。2015年春から「フェイト/エクストラCCC」の連載を予定している。
漫画家。 本作「フェイト/エクストラCCC FoxTail 」を手掛ける。デビューより成年向け雑誌を中 心に活躍。また間桐桜好きでも有名。代表作 「シアワセ少女」「カクセイ彼女」他。
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Questions
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――おふたりにとって、原作付き漫画の長期連載は初めての経験だったと思いますが、執筆依頼が来た時はどんな想いを抱かれましたか?
たけのこ
「Fate/Prototype」のアンソロジーへの執筆依頼が来た時は、「やった! TYPE-MOONのお仕事だ!! 嬉しい!!」と感激でいっぱいでした。でも、「FoxTail」のお話をいただいて話が進んでいくに従って冷静になっていったといいますか。もちろん、TYPE-MOONさんのファンである僕にしてみれば嬉しいのは当然なんですけど、心の中はクールダウンしていったというか。
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――TYPE-MOON作品を長期連載することへのプレッシャーのため、テンションがあがらなかったということでしょうか?
たけのこ
どちらかというと、「奈須さんが描く『CCC』らしさ」を自分が出せるかどうか、という不安の方が強かったですね。もちろん長期連載に挑戦することへの不安もありましたが、いろんな編集さんに「やってみれば、意外となんとかなる」と言われたのですがその言葉通り、実際に連載が始まったらほどほどにギリギリに続ける事が出来ています。連載がスタートしてからもう1年が過ぎましたが、本当にあっという間でしたね。大変ではありますが、とても充実していました。
ろび〜な
楽しい時間というものは、あっという間に過ぎてしまうものなんですよね(笑)。
たけのこ
ろび〜なさんの方はどういう経緯で執筆依頼が来たんですか?
ろび〜な
私が頒布していた同人誌か何かをご覧になった武内(崇)さんから、直接ご連絡をいただきました。最初は「ひびちか」のイラストを描いてほしいというお話から始まり、次は「フェイト/エクストラ」の宣伝用読み切り漫画、そして月刊誌での連載と、どんどん仕事内容のグレードがアップしていった感じですね。
たけのこ
武内さんご本人から直接のお誘いとは、すごいことじゃないですか!
ろび〜な
たけのこさんはこれまでも成年向け漫画雑誌で活躍されていましたが、私は商業誌で描かせていただくこと自体が初めてだったので、これは大変なことになったぞ……と。その一方で、キャラクターデザインを手がけられたワダアルコさんの絵を一目で気に入ってしまって、「このキャラクターたちを自分の手で描けたら、どんなに素晴らしいだろう」と思って、まず読み切り漫画のお仕事をお受けしたんです。そして読み切りのお仕事が終えて、今度は「この物語を最後まで描くことができたらいいな」なんて妄想していたら、今度は月刊連載が決まってさぁ大変という具合に……。
たけのこ
実際に連載のオファーが来た時、ろび〜なさんはどう思いました?
ろび〜な
私もたけのこさんと同じで、最初は他人事のような感じで「やった〜」って思うんですけど、後からジワジワと「えらいこっちゃあ〜〜!!」という焦りと不安がこみ上げて来ましたね(笑)。それでも、一生にあるかないかのチャンスでしたし、武内さんや奈須さんに背中を押していただいて、挑戦することにしたんです。自分の技術のなさもさることながら、「フェイト/エクストラ」はファンの方々がとても大切にしている作品ですので、連載中は緊張の毎日でした。
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――お二人が「フェイト/エクストラ」や「CCC」の漫画執筆に臨む際、どういったことに一番気を配っていますか?
エクストラ第3巻 ろび〜な
私はとにかく赤セイバーのキャラクターがとても気に入っているので、連載中はいかにカッコかわいく見せるかに心を砕いて描きました。ぶっちゃけると「赤セイバーかわいい!!」がすべてというか(笑)。私は女性を描く時、抱きしめたくなるような人をイメージして描いているのですが、赤セイバーはその割合がさらに高くなりました。第3巻の表紙絵は、赤セイバーの太ももをじっくり描けたので気に入ってます(笑)。
たけのこ
僕は今日お会いするまで、ろび〜なさんを男性の方だと思っていたんですよ。というのも、作中の赤セイバーからリビドーがビンビンに伝わってきて、これだけ赤セイバーに入れ込めるのは男性の方なのかなと思っていたんです。僕の場合、なかなかそこまでキャラクターに入れ込みきれなくて……。だから、ろび〜なさんの漫画はご自分がお好きなものを全力で描き、それが画面に反映されているところが本当に素晴らしいと思うんです。
ろび〜な
そうおっしゃっていただけると嬉しいです。こうして、これまで発刊してきたコミックスを並べると、絵柄の変遷がわかってしまってちょっと恥ずかしい(笑)。第1巻の頃は、もう無我夢中でやっていたんですけど、第3巻あたりでは「もっと頑張らなければ」と後ろを振り返るのがすごく辛くて。それと、とにかく限られた話数とページ数でお話を進めなくてはいけないところには苦労しました。そのため、丸々アレンジさせていただいた話も結構あります。とはいえ、後半は正規ルートのお話もしっかり描かなくてはいけないので、だんだん1話に盛り込む展開が膨らみすぎて、ネームが没になることもよくありました。
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4
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――たしかに、あれだけボリュームのある原作ゲームの内容を6巻にまとめるだけでも、相当大変だったと思います。一方で、執筆中に楽しかったこと、やりがいを感じたことはありましたか?
ろび〜な
赤セイバーのことを、原作ゲーム未プレイの方々にも深く知ってもらいたかったので、原作ゲームではテキストでしか触れられていなかった彼女の過去・ローマ編を描いたんですが、大変ではありましたが幸せな経験でした。民を導けなかった苦しみや、自分が愛した者に振り向いてもらえなかった心の葛藤。そしてその末に自ら命を絶ってしまったという悲劇的結末――。あのシーンは描いていて胸が締め付けられる思いがしましたが、彼女の心の在り方を描くうえではなくてはならないエピソードです。そうした辛い過去を踏まえて、白野くんに告白するシーンは私自身も気に入っています。
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――一方、「FoxTail」は「CCC」を原作としつつも、オリジナル展開が中心の外伝漫画ですが、こちらを執筆する際に心がけていることは?
たけのこ
出来てるかどうかはともかく、いかに奈須さんのキャラクターらしさを読者の方々に伝わるように描くかという点に毎回気を遣っています。「FoxTail」は外伝ではありますが、原作ゲームは絶対にないがしろにはできないので、まずはそこを表現した上で僕のテイストを出せればなと。そして、できればその上に僕なりの味をプラスしたいと考えているんです。武内さんには「もっとたけのこ星人らしい、リビドーを出して欲しい」といわれたんですが、なかなか難しいですね。だからこそ、ろび〜なさんがリビドー全開で赤セイバーを描いているのを見ると、余計にすごいなと思うんです。
ろび〜な
私の場合は、リビドー垂れ流しな感じですから(笑)。
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――たけのこさんが「FoxTail」を描いていて楽しかったことは?
たけのこ
とにかくアクションシーンをがんばって描きたかったので、本作ではたくさん描くことができて嬉しい限りです。とか言いながら、初めて戦闘シーンがあった回はスケジュールがグダグダになってしまって作画に時間を割けず残念な形になってしまいまして。単行本で一所懸命直しました。
ろび〜な
「FoxTail」の戦闘シーンは、マスターがサーヴァントに指示することで戦闘を有利に導くという、原作ゲームのシステムがきちんと反映されていますよね。あれはすごく良いアイディアだと思います。
たけのこ
ゲームのテイストを漫画で再現するっていうのが、個人的に好きなんですよね。僕の中での最高峰は、中平正彦さんが描く「ストリートファイター」シリーズなんですが、対戦格闘ゲームの絵面が齟齬なく漫画に落とし込まれているんですよ。ああいう事が自分も出来たらなと。
ろび〜な
わかります! 中平先生の「スーパーストリートファイターIIキャミィ外伝」は私のバイブルのひとつですから!!
たけのこ
原作ゲームの経験者には漫画を読まれた際に「あの演出をこういう解釈したのか、こういう表現にしたのか」という新しい発見を。漫画を読まれてからゲームをプレイされた方は「ゲームならではのこの表現は、実際はああなっているんだな」とゲームの世界をよりイメージしやすく膨らます手助けになれば。そんな風にゲームと漫画がwin-winの関係になれたらいいなぁと。例えばですが、この黒天洞の発動シーン、攻撃を避けてるコマは実は実際のゲームの黒天洞のモーションまんまなんですよね、みたいな。こういうの好きなんですよ。
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――「FoxTail」の内容をゲームに置き換えても、そのまま通じるようなものにしたかった、ということですね。
ろび〜な
キャス狐の良妻っぷりはもちろんなのですが、「CCC」の枠に止まらずにオリジナルに挑戦されているということ、そして企画段階で没になってしまった「サクラ ファイブ」がたけのこさんの手で復活したこと。それだけで私的には大満足です! それに、なにより桜がすごくかわいいんです。こんなに可憐な桜はみたことがない。
たけのこ
何をおっしゃいますか。桜はもともと可憐ですよ!?(笑)
FoxTail2巻 ろび〜な
第2巻の後半ではBB……っぽい人がゴスロリ衣装で出てきましたけど、こっちのデザインでいくのは大変だろうな〜。たけのこさん大丈夫かな〜と思ったものです。
たけのこ
「Fate/EXTRA material」に収録された没案のゴスロリ姿のBBは登場させるべきか迷ったんです。でも、「FoxTail」は恐らく「フェイト/エクストラ」のお蔵入りネタを拾い上げる最後の機会になるんじゃないか…というのはずっと感じてまして、ここで使わなかったらゴスロリBBはこの先も世に出ないのでは…それは勿体無い!ということで登場させる事にしました。たしかに作画は大変ですけど、ゴスロリBBは絶対に「EXTRA」ファンの読者の方に喜んでいただけると思いまして。
ろび〜な
そのたけのこさんのサービス精神は、本当に素晴らしいと思います。
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――では、たけのこさんからみた「フェイト/エクストラ」のご感想は?
たけのこ
率直な感想なんですけど、最初に「フェイト/エクストラ」を読んだ時、おそらくろび〜なさんは戦闘シーンを描くのはあまり得意ではない方なんだなと思ったんです。ですが、それを補って余りあるほどに赤セイバーが超イキイキしているんですよね。そして戦闘シーンでの彼女は、まるで舞い踊るかのように戦っているんですよ。「この角度で、このポーズを取らせたら、絶対に赤セイバーは輝いて見える」という気合いが、コマのひとつひとつから伝わってくるんです。僕はバトルを描くのが好きだと自覚していますが、ろび〜なさんほど赤セイバーを魅力的に、イキイキと描くことはできないでしょうね。
ろび〜な
たけのこさんのおっしゃるとおり、迫力のある戦闘シーンはなかなか描けなくて……。その代わり、「何はなくても、とにかく赤セイバーをかわいく!」という思いで、無我夢中で描いていましたね。
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――「フェイト/エクストラ」と「FoxTail」には、主人公として岸波白野が共通して登場していますが、おふたりは白野のキャラクターをどう捉えていらっしゃいますか?
エクストラ第4巻
ろび〜な
私は「岸波白野」という透明感のある名前のイメージを崩さないよう、漫画の方では無垢で透明感のある感じを意識して描いていました。
たけのこ
白野は没個性に見えますが当然個性が無いわけではないので、一応原作ゲーム準拠で白野にキャラクター付けをしているつもりです。当然自分の考える「原作準拠」ですけどね(苦笑)。「FoxTail」の白野ははっちゃけ度が増しているように見えますが、ギリギリ原作の白野くんの上に収まっている様にを狙ってまして、パートナーがキャス狐だからこそよりそういった部分が目立つようになっています。人間、絡む相手によっては影響が出るのは当然だろうという感じで…!
自分は「この白野は、ちゃんとゲーム通りの白野になっているかな?」と常に確認しながら描いているんですが、「フェイト/エクストラ」の白野はろび〜なさんの中できちんと消化され、その後でろび〜なさんの中から生まれ出でている感じがします。そういう意味では両作品で白野の描写に若干の違いは感じますね。
ろび〜な
「CCC」の白野くんって、けっこう肉食系じゃないですか。「フェイト/エクストラ」の時はあんなにストイックだったのに、「CCC」では女の子のヒミツを暴きに、心の奥底までガンガングイグイきて「白野くん、どうしちゃったの!?」という感じで(笑)。そうした原作ゲームのテイストの違いも、白野くんのキャラクターに表れているのではないかと思います。
たけのこ
たしかに、それはあるかもしれませんね。
ろび〜な
それと、白野くんの一人称にも深い理由付けがあるんですよ。奈須さんがおっしゃるには、白野はセイバーと出会い、自分の意志を取り戻して歩き始めるまでは、自我が今ひとつぼんやりした人だったんです。そのため、自分のことを「俺」とか「僕」とか呼ばずに、「自分」としか呼ばないんですよ。ですので、漫画の序盤では「自分」で通していたんですが、敵をガンガン倒し始めるようになってから「俺」というようになっていきました。
たけのこ
これがドラマCD版の白野くんは自分のことを「僕」って呼んでいるんですよね。ただ、白野役を演じる阿部敦さんの鈴の鳴るような声は、「僕」にものすごくマッチしているので、あれはあれで正解だと思うんですよ!
ろび〜な
阿部さんが演じる白野くんの声って、キュンッときますよね!
たけのこ
そうそう(笑)。だから、「FoxTail」を執筆するにあたっては、どれに合わせたらいいのか迷っちゃって。そこで奈須さんに相談したところ、「基本的には「自分」で。ここぞという時に「俺」でお願いします。」と教えていただきまして。一人称の違いでメンタル面の変化を表現する演出はさすが奈須さんだなぁと思いました。
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――そういえば、「岸波白野」という名前は、「フェイト/エクストラ」の連載が始まる時に、奈須さんが改めて考案された名前だったそうですね。
ろび〜な
そうなんです。奈須さんのネーミングセンスは誰も真似ができませんし、主人公の名前は作品の顔ともなるので、連載が決まった時に主人公の命名をお願いしたんです。その際、「フェイト/エクストラ」は海をイメージした仮想世界が舞台となっているので、海に関連する名前はどうかとこちらから提案しました。そうして、いくつか挙げていただいた候補の中で一際輝いていたのが「岸波白野」だったんです。透明感のある響きや、「キミノナハ ハクシ」というアナグラムが秘められているという仕掛けにも感動して、これ以外にない!と思いましたね。さらにこの名前の秀逸なところは、女の子主人公にして「白野ちゃん」にしても、まったく違和感がないところなんですよ。
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――たしかに、性別を問わず使えるナイスネーミングだと思います。ではお話変わりまして、今度は両作品のヒロインである赤セイバーとキャス狐の魅力についてお聞かせください。
エクストラの1巻2話目の3ページ目「返事待ちセイバーのソワソワ顔」のコマ
たけのこ
僕はろび~なさんが描く赤セイバーの、「返事待ちのソワソワ顔」が 本当に素晴らしいと思っていまして。「どう思う? この肖像画」と聞きつつ、 ソワソワチラチラ(笑)。あの「発明」は最高ですね!
ろび〜な
良い感じの反応が返ってくるまで、ずっと同じことを聞き続けるという(笑)。奈須さんが生み出した赤セイバーというキャラクターが、出会った瞬間にそそり立つほどにキャラクターが立っていたので、これはよじ登って堪能するしかないという感じでした。執筆中、彼女のセリフを考える時はすごく楽しかったです。ネームを考えている時なんかは、自分が白野くんになってセイバーと頭の中で会話しているみたいな感じでした。
たけのこ
そこなんですよね。その「キャラクターに対する入れ込み」が僕にはなかなか出来なくて、羨ましい限りです。
ろび〜な
それに、赤セイバー役の丹下桜さんの声がまた素晴らしくて。アリーナを巡っている時もランダムでしゃべってくれるんですけど、あの声を聞くだけで脳がとろけそうになります(笑)。
たけのこ
丹下ボイス最高ですよね。あの声も赤セイバーのキャラクター付けに一役買っていると思います。あの声なら、どんなハチャメチャなことを言われても許しちゃう気がする(笑)
ろび〜な
赤セイバーってすごく懐が深いんですよ。何をやっても許される感というか、「赤セイバーだから許す!」みたいな感じがあります。まさに「皇帝特権」(笑)。
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――一方、キャス狐についてはいかがでしょうか?
たけのこ
基本的に計算高い娘なんですが、まだ全貌を掴みきれてないと感じます。あるシチュエーションに対して、ギャグで茶化すのか、それともシリアスに押し通してくるのか。頭の中でシミュレーションしてみても、正解を見つけるのが難しいというか正解なんて無いというか。属性にいたっては「中立・悪」ですからね。でも当然、自称「良妻賢母」なので、「ご主人様のことが大好き! ご主人様至上主義!!」なところはブレないように気をつけています。
ろび〜な
次の瞬間に何をしてくるのか読めないところは、本当に面白いキャラクターですよね。
たけのこ
キャス狐は誰かと絡ませることでより輝く気がしますよね。他のキャラクターとの掛け合いで俄然輝いてくる。
ろび〜な
どちらかというと、自分からグイグイ面白いことをしゃべるんじゃなくて、他の人に茶々を入れることで面白さを発揮するタイプ。お笑い芸人でいうなら、間違いなくツッコミの方ではないかと。
たけのこ
我が道を行く「ボケ」である赤セイバーと絡ませたら、ものすごい爆発力がありますよね(笑)
ろび〜な
私、「FoxTail」内でお目覚めの時、横にキャス狐が添い寝していたシーンがすごく好きなんです。作画にものすごく力が入っているのが伝わってきました!
たけのこ
ありがとうございます! あのシーンは一から描き直しているんですよ。最初は横に2人並んで寝ているところを、上から見下ろしている構図だったんです。でも「いや、これは違うな。『朝チュン』といったら主人公の視点で描くべきや!」と思って、自らリテイクしました。以前、「アマガミ」のアンソロジーコミック「アマガミ -Various Artists-2」への参加が決まった際に、東雲太郎さんの「アマガミ ―Precious diary」を読んで勉強しようと思ったんです。その時に、主人公視点で見た女の子の顔のアップが沢山あって。なるほど、こういう手があるのかと勉強させてもらったので、あの時のことを思い出しつつ、キャス狐の添い寝シーンを描き直したんです。
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――ではお次は、お互いの作品のお気に入りシーンについてお聞かせください。
ろび〜な
いっぱいありすぎて選ぶのが大変だったんですが……。「FoxTail」でセイバーが初めて宝具を展開するシーンは度肝を抜かれましたね。こう攻めてくるかぁ、という感じで。私は「フェイト/エクストラ」の連載中、ゲームでの宝具発動ムービーのようなシーンを漫画で描けたらと思って苦戦していたんですけど、「FoxTail」の一コマはまさにそのイメージそのままです。私もこんな迫力のある宝具発動シーンを描きたかった!
たけのこ
最初はこの技を出す予定はなかったんです(笑)。以前、奈須さんにこの英霊に関するエピソードを軽くお伝えしたら、「いいですね! 名前はこうしましょう。技を出す時の祝詞はこんなんでどうですか?」と、剛速球で返答がきて、こんな美味しいネタを貰ったのなら使うしかないなと。ただ、さっき言ったスケジュールがかなりカツカツな回だったので、見開きでド派手に宝具を展開するシーンを描くのは、相当しんどかったです(笑)。
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――では、たけのこさんのお気に入りシーンはいかがでしょうか?
語弊を恐れずに言えば、「フェイト/エクストラ」というゲームは、舞台が学校とアリーナと決戦場だけと舞台が限定されていて、物語も1回戦から7回戦まで勝ち抜いていくだけ、というシンプルな構成です。シナリオの内容自体はすごく凝っていますが、基本線はシンプルなので、非常に漫画栄えしづらいと思うんですよね。そんな中にあって、ろび〜なさんは5回戦で舞台をジャングルに移したりして、単調になりがちな背景に変化をもたらそうと工夫されているんですよね。
ろび〜な
やっぱり作家さんが相手だと、そういうところもご理解いただけて嬉しいです。苦労が報われた感じがします。
たけのこ
物語を広げにくい作品ではありますが、だからこそちょいちょい差し挟まれるオリジナルシーンにはグッとくるんですよ。特に物語の冒頭でランサーとランルーくんが大暴れして、4回戦でその伏線がきちんと回収されて体育館で戦うことになるという流れは神がかっていましたね。ところで、6回戦の相手をラニにしたのはどうしてなんですか?
ろび〜な
あれは奈須さんからの提案で、最終的には凛ルートでいくことになっていたんです。ただ、そこまでの展開でラニがすごく良い味でキャラを出せていたので、敵として戦わせることになったのは辛かったですね。
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――ところで、おふたりともに女性キャラクターの胸の描写には、かなりこだわりがあるようにお見受けしますが……?
ろび〜な
ありますね(笑)。私は個人的に大きいお胸が好きなので、ついいつも大きめに描いてしまいます。ただ大きく描くのではなく、「たゆんとした感じ」というか、思わず触りたくなるようなお胸になるよう心がけて描いています。
たけのこ
連載の最初の方から比べると、だんだん赤セイバーの胸が大きくなっていますよね?(笑)
ろび〜な
「Fate/stay night」のセイバーって、すごくストイックなイメージじゃないですか。あのセイバーと赤セイバーは別人ではありますが、あんまりふくよかな感じにすることに最初は抵抗があったんです。でも連載を始めてから、武内さんから「もうちょっとお胸を盛った方がいいのでは」と言われまして。武内さんからのGOサインが出たので、序盤は「プリンッ」て感じだったのに少しずつ大きくなっていって、最後の方では「バインッ!」って感じにまで成長しました(笑)。
たけのこ
武内さんからですか!?前回の対談で、自身の描かれる胸の話題になるとすごく恥ずかしそうにされていたのに!そういった判断をシッカリされるのは流石だなあ。僕もろび〜なさんと同じく、ちょっと重力に負けてたれ気味なくらいの大きいお胸が好きでして。ただ、あまりたれさせてもよろしくないので、「重力に抵抗しつつも若干負けている」くらいの張りとたれ加減に気を配っていければなと。
「FoxTail」には超ド級のおっぱいキャラであるパッションリップが登場したじゃないですか。あのでかさでも、なんとか重力に抵抗している感じがたまらない(笑)。ところで、たけのこさんはパッションリップとメルトリリスとでは、どっち派なんですか?
たけのこ
僕はリップ派ですね。「ヤンデレ感」と「報われない感」が良いんです!!
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――ろび〜なさんは「フェイト/エクストラ」を無事完結に導きましたが、3年半の連載を終えた気持ちについてお聞かせください。
ろび〜な
連載が始まった頃は、ちょうど東日本大震災の混乱で、第1話が無事掲載できるかどうかというパニックの中でのスタートでした。そこから3年半という長きにわたって描かせていただいた連載を無事に終えることができて、本当に感無量です。お恥ずかしい話ですが、最終話のあたりは泣きそうになりながら描いていました。白野くんと赤セイバーの旅路を最後まで描けてとても楽しかったですし、商業誌での連載はずっと憧れていたお仕事だったので、嬉しさもひとしおです。コミックス第6巻には、描きおろしでエピローグも描いていますので、ぜひそちらもご覧いただければと。
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――このあとは、すぐ「CCC」の連載も控えていますね。
ろび〜な
「フェイト/エクストラ」は赤セイバーへのラブだけで突っ走った感 がありましたが、「CCC」はさらに魅力的なキャラクター立ちが続々と登場する じゃないですか。女性キャラだけでなく、男性陣も立てなければいけないので、 今からどう描いたら面白くなるだろうかと思案中です。
たけのこ
「CCC」は最初から登場するキャラが多いんですよね。「FoxTail」で は「新規読者が混乱しない様に」だとか、「「CCC」とは別の話ですよ、という 表明」等、色々理由はありますが序盤で何人かのキャラにご退場いただいて数を 絞ったんです。彼らの語り口を再現するのは大変だと思いますけど、「CCC」で ろび〜なさんがあれらのキャラをどう描くのかすごく期待しています。
ろび〜な
「FoxTail」ではいの一番にやられちゃいましたからね。「CCC」では私が大好きなアンデルセンを救済してあげなければ(笑)。
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――「FoxTail」の方はいよいよ物語が動き出した感がありますが、今後どんなお話が描かれるのかヒントだけでも教えていただけますか?
たけのこ
第1巻で「このお話、面白そうでしょ?」という素材を並べ、第2巻のラストで「ようやくここから物語が始まりますよ」という感じで終わりました。今後は物語が一層オリジナル方向に向かって走り出していくので、そこにご期待いただけると嬉しいですね。というか、これまでにお話が全然進んでいないので、これはイカンと思ってはいるのですが……(笑)。
ろび〜な
むしろ私としては、「FoxTail」の連載をもっと引き延ばしていただきつつ、「CCC」の連載と手を取り合ってコンテンツを長〜く長〜く宣伝していきたいなと(笑)。
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――それでは最後に、お二人からメッセージを。
たけのこ
「CCC」のファンにはより一層楽しめるものを。ゲーム未プレイの方でも面白いと思っていただけるものを目指して、これからも頑張っていきます。春からはろび〜なさんの「CCC」連載も始まりますし、我々2人でコンテンツを盛り上げていければと。あとろび〜なさんには、赤セイバーに向けていた情熱を、桜にも向けていただければ僕がニコニコします。かわいらしい桜が出てくるたびに、僕が1ニコしていると思って、頑張っていただきたい!!(笑)
ろび〜な
連載はもう少し先になりますが、ぜひともたけのこさんを筆頭とする桜ファンを悶絶させるような作品を描きたいです。「CCC」はよりお色気方面に踏み込んだ内容になると思いますが、そのあたりもお楽しみにというところで。ただ、生徒会があの面子では、うっかり白野くんも脱がされてしまいそうな感じもしますが(笑)。
たけのこ
それはそれで見てみたいような(笑)。
聞き手・構成:福西輝明(ライター)
©TYPE-MOON ©Mavelous Inc.
©たけのこ星人/角川書店
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References